「地域有識者懇談会」(第9回会合)開催概要

1.日時

2023年8月25日(火) 14:00~16:00

2.場所

JICA北海道センター(帯広)会議室

3.出席者(敬称略)

  • 有識者:有塚利宣委員(帯広市川西農業協同組合 代表理事組合長)、池原佳一委員(帯広市 副市長)、長澤秀行委員(国立大学法人北海道国立大学機構 大学総括理事(帯広畜産大学学長))(五十音順)※川田章博委員(帯広商工会議所 会頭)はご欠席
  • 来賓:芳賀是則氏(北海道十勝総合振興局 局長)
  • 同行者:山中雅生氏(帯広市経済部観光交流室長観光交流課 課長補佐 兼 森の交流館・十勝 館長)、舛川正晃氏(国立大学法人北海道国立大学機構 帯広畜産大学 事務部 国際・地域連携課 部長兼課長)、小倉弘太郎(北海道十勝総合振興局地域創生部地域政策課地域政策係 主任)
  • JICA:井倉義伸(理事)、増古恵都子(国内事業部 計画・国内連携推進課 課長)、阿部裕之(北海道センター 所長)、木全洋一郎(北海道センター(帯広)代表)、谷口光太郎(北海道センター(帯広) 副代表)、松本太樹(北海道センター(帯広) 副調査役)

4.議事概要

冒頭、JICAを取り巻く国際協力の潮流とJICA北海道(帯広)の2022年度の事業実績、2023年度の計画・現状についてJICAから報告した後、意見交換を実施した。有識者からは、日本と途上国が Win-Win になる関係づくり、JICA 海外協力隊と地域おこし協力隊の連携による地域振興、帰国後の繋がりを意識した戦略的な研修員の受入れ、外国人材の獲得に向けた十勝の魅力発信の必要性といった貴重な意見が出された。

(1)日本と途上国が Win-Win になる関係づくり

(有識者)
途上国に対して一方的に与えるだけではなく、日本と途上国が双方に利益を得られる関係を構築していく必要がある。例えば、帯広市がJICAの支援のもとマレーシアと実施している協力事業を通じて、ハラルマーケットに十勝の産品を展開していくべく、市場の調査や法制度の調査・連携を進めているように、途上国のマーケットを開拓していくことも日本側のメリットになる。十勝の先進技術であるバイオガスをはじめとした工業技術は途上国の需要も高く持ち込み易い。十勝から国外へ進出し、十勝に各国の人が集まることで、外国の風習・文化等をあらゆることを学び合うこともできる。

(JICA)
帯広市×マレーシアの協力をはじめとした各自治体の特色を生かした国際協力事業を、草の根技術協力や研修等の複数の事業を組合わせつつ、JICA海外協力隊等の国際協力人材なども活用しながら推進し、途上国と十勝の双方が利益を享受できる形を目指していく。

(2)JICA 海外協力隊と地域おこし協力隊の連携による地域振興

(有識者)
現地で努力し、経験を積んだ JICA 海外協力隊が日本でその能力を活かしていくという観点からも、地域おこし協力隊は地域への貢献にもなる良い策であると考える。おこし協力隊の任期後のフォローも含めて、皆で考えていく必要がある。十勝では、帯広市のおこし協力隊が主体となり、任意団体としてとかち地域おこし協力隊ネットワーク(以下「TCN」)を設立した。おこし協力隊は必ずしも海外志向というわけではないが、JICA 協力隊との共通の目的として「地域の振興」があり、親和性がある。自治体のサポートのもと、JICAやTCNが持つ人的ネットワークを活用し、様々な場面でおこし協力隊の活動を PR し輪が広がることを願う。

(JICA)
おこし協力隊の存在感が大きいということを実感した。JICA 海外協力隊については、日本全体で少子化&内向き志向になっていることもあり、応募者が減っているのが課題。海外に興味があるおこし協力隊の方に JICA 協力隊の経験をシェアし、お互いに学び合うコラボも検討していきたい。

(3)帰国後の繋がりを意識した戦略的な研修員の受入れ

(有識者)
長期研修員(留学生)に関しては、一方的な指導ではなく、Win-Win の関係構築を意識している。十勝の場合、農業・畜産・獣医学を中心に学びに来る研修員が多いが、文化・風習の違いなども含め、日本人と留学生がお互いに学んでいく必要があると考える。日本人学生との交流事業は引き続き継続しつつ、帰国後に日本の(十勝の)良きパートナーとして活躍してもらうためにも、帰国研修員との連携好事例について、他の地域の事例も参考にしたい。

(JICA)
これまでのJICA は、短期研修、長期研修、技術協力等、それぞれの事業を個別に推進しており、中長期的にどうビジネスを展開していくかという発想が足りていなかった。帰国後に起業したり、海外進出を目指す日本企業のビジネスパートナーになったりする帰国研修員も増加している。教訓・事例を蓄積し、関係団体にシェアをしていくことで、連携を促進していくことが JICA の責務である。長期研修員に限らず、おこし協力隊等も含めた様々なパートナー連携の光る事例を各拠点で共有できる仕組みを考えていく。

(4)外国人材の獲得に向けた十勝の魅力発信の必要性

(有識者)
労働力不足は1次産業の喫緊の課題であるが、外国人労働者については実態が把握できていないのが実情。外国人との共生が実現された選ばれる日本になるためには、まずは外国人労働者が現在どういう状況にあり、何を考えているのか、状況把握をしていくことが重要である。来日した外国人に対しては、語学対策として教育機関を設置することも検討する必要がある。外国人材をどう温かく迎えるのか、お金に換えられない価値をどのようにアピールしていくかが肝要。

(JICA)
労働力の確保については、どの自治体も悩んでおり、外国人が日本に来てよかったと思ってもらえるような取組を町ぐるみで考えていく必要がある。技能実習生については、給料がより高い実習先に移ってしまうのではないかという懸念がある一方で、北海道と比較して賃金の高い東京を選べば必ずしも豊かな暮らしをしているわけではないだろう。データの裏付けによるものではないが、地域コミュニティに属することで得られる心の豊かさを優先する方も多いと推察する。必ずしも給料だけではなく、暮らしやすさ、アクティビティ、地元の方の受容体制など、お金に換算できない価値も選ばれる要素になると考えられる。

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集合写真